法曹以外の法律家①隣接法律専門職について(司法書士・弁理士・行政書士・社会保険労務士)

本日のテーマは、「法曹以外の法律専門職」についてです。法律専門職にはさまざまな種類があります。それぞれの専門分野を知り、誰に相談するのかを明確にしておくと、トラブル発生時の対応もスムーズにできるのではないでしょうか。

これまでこちらのブログでは、法曹三者や法科大学院制度、憲法や刑法など、法律に関連するさまざまな話題を扱ってきました。こういった記事を通して、一般市民によるリーガルサービスの利用促進が叫ばれているなかで、法律や法務について学んでいくことは重要だと感じています。ブログに書けることは限られていますが、ここに書いたことをきっかけにして、情報検索等を通じてそれぞれ知識を深めていくこともまた大切だと思います。

さて、上記の通り、こちらのブログでは法律についてさまざまなテーマを扱いました。ただ、これまで扱ってきたテーマは、法曹三者(弁護士・裁判官・検察官)や教育制度、法律についてなど、普段の生活ではあまり縁のない領域に属しているものが多かったかもしれません。私生活でなにか法的なトラブルが起きたからといって、突然弁護士に相談したり訴訟を提起したりする人はあまりいないと思います。以前と比較すればそのハードルやコストも下がりつつあるとはいえ、やはり費用対効果の面ではなかなか難しいですよね。

そういった場合、法テラス(日本司法支援センター)へ行って具体的に相談してみる方も多いと思います。法テラスは「法で社会を明るく照らす」「陽当たりの良いテラスのように皆様が安心できる場所にする」という理念で2006年に設立され、弁護士によるリーガルサービスを受けるための情報提供や支援を行っている組織です。法テラスは法の支配をあまねく行き渡らせるために出来た画期的なサービスではあるのですが、実は収入や相談内容など、一定の条件を満たした人だけが無料相談できるシステムになっています。また、回数や時間などの条件もあります。

弁護士に直接法律相談してみる、というのも一つの手かと思います。しかし、弁護士の相談料や着手金は高額なので、そう気軽に依頼できるものではありません。ここで選択肢として挙がってくるのが、「隣接法律専門職」と呼ばれる人々、すなわち司法書士、弁理士、行政書士、社会保険労務士などです。ただ、これらの専門職は似た名称も多く、具体的にどのように分担されているのか少し分かり辛くなっています。以下、それぞれの特徴をまとめてみましょう。

司法書士は、登記や供託の代理、裁判所や検察庁、法務局に提出する書類の作成提出を専門とする法律家です。これらの業務は、資格者以外が行うと違法となってしまう独占業務です。このうち司法書士のメインの業務として有名なのが、不動産登記や商業登記などの登記の代理です。また、法務大臣の認定を受けた司法書士は、簡易裁判所における訴額140万円以下の訴訟、民事調停、仲裁事件、裁判外和解等を代理することもできます。つまり、司法書士は少額の係争であれば弁護士のように訴訟もできる資格となっています。このように、弁護士に次ぐさまざまな法律業務を代理できる司法書士は「街の法律家」とも呼ばれています。

司法書士の人口は約20000人です。弁護士は大都市への偏在が顕著で、地方では過疎化が問題となっています。一方、司法書士は地方都市にも多く開業しており、地方では特に大きな存在感を占めていると言えるかもしれません。司法書士になるためには、基本的に司法書士試験に合格する必要があります。この司法書士試験は非常に難関な資格として知られており、毎年の合格率は2~3%となっています。このように参入障壁を高くし、人口が増えすぎないように調整することで、司法書士の質を担保していると言えるかもしれません。司法書士は弁護士のようにバッジ(記章)を携帯しており、司法書士バッジのモチーフは菊花紋に準ずる国章「五三桐花」です。日本社会において重要な職務を果たす専門職として、このようなバッジが指定されているのかもしれません。

次に弁理士について紹介しておきます。弁理士は、主として知的財産に関する法律業務、特許庁への出願手続代理、審判請求手続・異議申立て手続の代理業務を職域とする法律家です。特許権、意匠権、商標権など、なんらかの発明やアイデアに関する法務を担っていることから、「閃きの番人」とも呼ばれています。弁理士の多くは特許事務所や企業に所属しているため、一般市民が相談することはあまりないと言って良いかもしれません。

弁理士の人口は約1万3千人で、約半数は特許事務所に勤務しているようです。弁理士資格を得るためには、基本的に弁理士試験に合格する必要があります。弁理士試験は司法書士試験と並ぶ難関とされています。合格率は6~10%程度となっていますが、合格者の多くが旧帝大や早慶の理工系出身者であり、高学歴の中での競争となっています。弁理士バッジのモチーフは、十六弁菊花紋の中央に五三桐をあしらったもので、司法書士のものと類似しています。やはり、国家において重要な責務を負う職業であることを示しているのでしょう。

さて、次に紹介する行政書士については、比較的耳にする機会も多い職業ではないかと思います。ただ、同じく「書士」と呼ばれる司法書士との違いがわからないという方も多いようです。実は、行政書士と司法書士はかなり異なった職業です。以下、行政書士の特徴をまとめてみましょう。

行政書士は、官公庁に提出する書類および権利義務・事実証明に関する書類の作成、提出手続を職域としています。要するに、役所に提出する書類の作成と提出を代理できる仕事です。また、特定行政書士として指定を受けた行政書士は、行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理することもできます。つまり、行政書士の職域はかなり広いのですが、遺言書作成、契約書作成、自動車登録、帰化申請、許認可申請、内容証明作成などが、行政書士のメインの職域とされています。なお、司法書士のように少額訴訟を行ったり、登記の代理を行ったりすることはできません。

行政書士の人口は約4万人で、弁護士や他の法律専門職と比較してもかなり多くなっています。大都市、地方都市問わず、行政書士事務所はいたるところに開業しているため、もっとも気軽に相談できる法律家と言えます。ただ、行政書士は職域が広い分、それぞれに専門領域があるため、事前にどの行政書士に相談するかを確認しておいた方が良いでしょう。公式サイトから地域や取扱業務などから行政書士を検索することができるので、活用しましょう。行政書士になるためには、基本的に行政書士試験に合格する必要があります。ただし、弁護士、弁理士、公認会計士、税理士資格を持つ人は、試験を受けなくても行政書士として開業登録することができます。行政書士試験は、司法書士試験や弁理士試験ほどの難関ではないものの、やはり難しい国家試験として知られています。行政書士試験の合格率にはばらつきがあるものの、最近ではおおむね10%前後で推移しています。合格者のバックグランドもさまざまで、参入障壁は司法書士や弁理士よりは低いと言えるでしょう。行政書士バッジのモチーフは、コスモスの花の中央に、行政書士の「行」を篆書体で配置したものです。

最後の社会保険労務士は、労働関連法令や社会保障法令に基づく書類等の作成代行や、企業の労務管理や社会保険に関する相談・指導を職域とする専門家です。基本的には、企業から相談を受け、賃金計算を行ったり、労働環境の改善についてのコンサルティングを行ったりする職業です。そのため、一般個人がいきなり社会保険労務士に相談するというシチュエーションはあまりないかもしれません。ただ、社会保険労務士の職域には年金に関する内容も含まれており、年金に関する相談や手続きを依頼する、ということは可能性として考えられます。また、職場で労働トラブルが発生してしまった際に、社労士と相談する状況になることも考えられます。

社会保険労務士の人口は約4万人で、行政書士と同程度となっています。社労士事務所も大都市、地方都市問わずさまざまな地域に展開していますが、基本的に企業がクライアントなので、都市が活動領域となります。社労士となるためには、基本的に社会保険労務士試験に合格後、2年以上の実務経験が必要となっています。他の法律専門職と異なり、試験に合格しただけでは開業登録できないところがポイントです。社会保険労務士試験は、おおむね行政書士試験と同程度か、あるいはやや難しい試験だと言われています。合格率はだいたい6~10%程度ですが、あまり安定しておらず、時によっては司法書士試験と同じ水準の2%台まで下がることがあります。社労士バッジのモチーフは「16弁剣菊」で、日本を代表する花である菊が選ばれています。

本日は、司法書士、弁理士、行政書士、社会保険労務士という「法曹以外の法律家」に焦点を当ててみました。これらの職業は「隣接法律専門職」とか「士業」と呼ばれることが多いです。本日挙げた4士業に関していうと、司法書士が登記、弁理士が知的財産、社労士が労働という専門分野を持ち、それ以外の部分を行政書士が引き受けているという構図が見えてきました。アメリカ合衆国などでは、法律に関する業務はほぼすべて弁護士が引き受けていると言われていますが、日本には隣接法律専門職が発達しており、弁護士に頼む前に解決する問題もあります。問題の内容、性質に応じて、どの専門家に相談するかを明確にすることで、問題解決のコストを繋がることになるのではないでしょうか。

ABOUTこの記事をかいた人

武蔵野音大卒の声楽家。様々な芸能技法を武田梵声氏に師事しており、音域は8オクターブ(E-1〜E7)に及び、コロラトゥーラなども得意とする。日本とイギリスのハーフで、スペインやベネズエラの血も入っている。人類史上最高の歌手を目指して日々ストイックなトレーニングを重ねている。