日本の都市について①政令指定都市・中核市・施行時特例市

現在日本の人口は1億2667万人とされていますが、そのうち30%以上が東京を中心とする首都圏に居住していると言われています。人口以外の面でも、東京は日本全国に大きな影響力を持ち、他の都市の追随を許しません。あらゆるものが東京を拠点に発信されているようにも思われます。一方、近年では地方都市に対する注目も高まっているように感じられますね。「Uターン就職」や「Iターン就職」といった言葉も聞かれるようになりました。「Uターン」は一度上京した人がいわゆる地元へ戻っていくことを指します。こちらはそれほど珍しいことではありません。「Iターン」は首都圏で生まれ育った人が地方へ出て行くことを指します。こちらは比較的新しい流れだと言えます。

このように地方への注目が高まっている昨今ですが、地方都市の地位についても、近年では変化が見られます。政令指定都市、中核市、特例市などといった言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。これまでこちらのブログではメッセージ性の強い内容を発信してきましたが、今回は少し息抜きということで、日本の地方都市に関する制度についてまとめてみたいと思います。

先ほど「首都圏」と何気なく書きましたが、首都圏とは東京を中心とする近隣自治体を合わせた呼び方ですね。首都圏という名称には法的な根拠があります。首都圏整備法という法律では、首都圏とは「茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県」の1都6県を指すこととされています。つまり、関東地方=首都圏と考えられているのですね。なお、英語では日本の首都圏を「大東京圏(Greater Tokyo Area)」と呼ぶようです。群馬や栃木ともなると東京からかなり離れているので、だいぶ大雑把な名称なのですね。

さて、東京周辺地域を「首都圏」と呼ぶのは、当然ながら東京が「首都」と見なされているからですね。「見なされている」と書いたのは、東京を首都として明確に定めた法がないためです。これはトリビアのように言われていることですが、それでも東京の首都としての地位は多くの人が認識していることですね。全国の47都道府県のうち、「都」が含まれているのは「東京都」のみであり、その地位を揺るぎないものとしています。また、東京の都立大学は「首都大学東京」であり、首都であることを強調しているわけですね。

さて、首都東京に次ぐ地位を持つ日本の都市として、「政令指定都市」というものがあります。政令指定都市は人口50万人以上で政令(内閣の出す命令)によって指令された都市を指します。政令指定都市は現在では20都市存在していますが、それぞれその所在地域の中心都市として栄えており、日本の大都市はすべて政令指定都市です。

政令指定都市は、一般的な市とはなにが違うのでしょうか。大きな違いはその「権限」です。政令指定都市は、本来都道府県、つまり県庁などにしか処理することのできない事務を、全部または一部処理する権限があるとされています。基本的には都道府県と同じ事務を扱うことができるので、政令指定都市は都道府県と同格の地位を持っている、と言われています。

もう1つ、政令指定都市の特徴として挙げられるのは、各市が「区」を持っていることです。たとえば、政令指定都市の1つである大阪市は、鶴見区、阿倍野区、西区、港区、大正区、天王寺区、浪速区、西淀川区、淀川区、東淀川区、東成区、北区、都島区、福島区、此花区、中央区生野区、旭区、城東区、住之江区、住吉区、東住吉区、平野区、西成区という24の区が存在しています。「東京23区より多い」と驚かれる人も多いのではないでしょうか。ただ、東京の区と政令指定都市の区には違いがあります。東京の区は「特別区」という地位を持っており、市町村と同格の強い権限を持っています。一方、大阪など政令指定都市の区は「行政区」と呼ばれており、市の業務を分担するための区だとされています。

このように、都道府県並みの権限と行政区を持つ政令指定都市は、上記の通り全国に20都市存在しています。人口が多い都市から書くと、横浜市、大阪市、名古屋市、札幌市、福岡市、神戸市、川崎市、京都市、さいたま市、広島市、仙台市、千葉市、北九州市、堺市、新潟市、浜松市、熊本市、相模原市、岡山市、静岡市の順になっています。神奈川県が横浜市と川崎市を、大阪府が大阪市と堺市を、静岡県が浜松市と静岡市を持つなど、1つの府県に2つの政令指定都市が存在するパターンもあるのですね。

上記の政令指定都市のうち、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸の5市を「五大都市」と呼んでいる時代もありました。現在でも「五大都市」ということもありますが、構成が変わっており、札幌、東京、名古屋、大阪、福岡を指すことが多くなっています。それぞれ北海道・東北、関東、東海、関西、九州を代表する都市という意味で「五大」と呼ばれているのでしょう。また、東京、名古屋、大阪のことを「三大都市」という場合もありますね。また、近年話題となっている都市のグループが「札仙広福」です。漢字からわかるように、札幌、仙台、広島、福岡を指します。首都圏、中京圏、関西圏にも含まれない地方の大都市を一まとめにした名称ですね。このなかでは、札幌の人口がもっとも多くなっています。

さて、政令指定都市が大阪や名古屋など東京に次ぐ都市のグループであることはこれでわかりました。政令指定都市より下位の都市群として「中核市」という制度があります。中核市は法定人口が20万人以上の都市が指定されることになっています。もともと、中核市の要件は「法定人口30万人以上」だったのですが、それが20万人まで緩和されました。緩和された背景としては、以前存在していた「特例市」制度(人口20万人以上が基準)を中核市制度に統合したためです。

中核市は他の市とどのように違うのでしょうか。中核市は、政令指定都市が処理できる事務のうちの一部を処理することが許されています。政令指定都市ほどではないものの、普通の市よりは強い権限が与えられているということになります。具体的な事務としては、社会福祉施設の設置や伝染病予防のための措置などが認められています。政令指定都市との違いとしては、中核市には「行政区」は設けられていません。

中核市は政令都市よりも指定要件がかなり緩やかなため、その数も多くなっています。現在日本には54市が中核市となっています。人口が多い順に、船橋市、鹿児島市、川口市、八王子市、姫路市、宇都宮市、松山市、東大阪市、西宮市、大分市、倉敷市、金沢市、福山市、尼崎市、豊田市、柏市、高松市、富山市、長崎市、岐阜市、枚方市、宮崎市、豊中市、横須賀市、岡崎市、豊橋市、長野市、高崎市、和歌山市、奈良市、川越市、高槻市、越谷市、いわき市、大津市、前橋市、郡山市、旭川市、高知市、那覇市、秋田市、久留米市、明石市、盛岡市、福島市、青森市、八尾市、下関市、函館市、佐世保市、八戸市、呉市、松江市、鳥取市が中核市となっています。船橋市の人口が中核市のなかでもっとも多いのは少し意外です。船橋市の人口は63万人で、人口だけでいえば政令指定都市に匹敵する規模となっています。

上に挙げた中核市の数は、現状でもすでに多いですが、これから増加すると考えられます。というのも、中核市に次ぐ位置づけだった特例市制度が2015年に廃止され、特例市の多くが中核市への指定を目指しているためです。特例市は中核市に準じた地位を持っていました。制度としてはすでに廃止されましたが、特例市に指定されていた都市は現在でも

施行時特例市」と呼ばれており、中核市に移行する資格を持っています。すでに中核市に移行した市も多くありますが、施行時特例市として残っているのは31市です。人口順に並べると、吹田市、一宮市、所沢市、四日市市、春日井市、茨木市、水戸市、長岡市、加古川市、福井市、平塚市、山形市、草加市、富士市、茅ケ崎市、松本市、つくば市、大和市、佐賀市、寝屋川市、春日部市、厚木市、宝塚市、太田市、伊勢崎市、熊谷市、上越市、小田原市、岸和田市、沼津市、甲府市が施行時特例市となっています。福井や甲府のような人口の少ない県庁所在地から、所沢や大和のような首都圏近郊のベッドタウンまで、さまざまな都市が含まれていますね。すでに書いた通り、施行時特例市の多くは中核市への移行を目指しているため、いずれ中核市の数が大幅に増えることになるでしょう。

首都、政令指定都市、中核市、特例市と、日本の都市を制度という側面から概観してみました。日本には多くの都市がありますが、人口の集中が顕著な傾向にあり、日本の人口の多くが東京と政令指定都市に集中しています。このような事態を解消するために、地方活性化の運動や議論が地方のみならず東京でも活発になってきているわけですね。

Iターン就職のような流れも、地方活性化と一体的に進展してきたように思います。人手不足の時代に、都会に偏重しがちな人口を地方に分散するというのは、地方自治体としてはかなりあり難いことでしょう。ただ、地方における受け入れ態勢が整っているか、という問題はやはり無視することができません。都会の生活において重要なのは、住居や交通機関といったハードなインフラだけではなく、人間関係や自由な価値観など、ソフトなインフラなのではないでしょうか。そういう意味で、都会のインフラに慣れ切った人間が突然地方都市へ行っても移住が成功する可能性は低くなります。個人的な見解としては、中核市以上の都市であれば、地方であっても都会人には比較的住みやすいのではないかと考えます。やはり移住前の情報収集は非常に重要です。また、情報を集めるだけでなく、実際にその都市に通い、空気感や風土などをつかんでおくことも重要でしょう。

ABOUTこの記事をかいた人

武蔵野音大卒の声楽家。様々な芸能技法を武田梵声氏に師事しており、音域は8オクターブ(E-1〜E7)に及び、コロラトゥーラなども得意とする。日本とイギリスのハーフで、スペインやベネズエラの血も入っている。人類史上最高の歌手を目指して日々ストイックなトレーニングを重ねている。