なぜ、音楽理論の基礎を学ぶことが大事なのか

こんにちは。ピアニストで作曲も担当している渡邊拓也です。本日2本目の投稿になります。高校時代の受験勉強を経て、音大で勉強を重ね、作品を産み出す分野の基礎になる「音楽理論」の勉強を、可能な限りやってきた者としての一意見であります、「基礎の大切さ」について書きたいと思います。

何か勉強する時に、「基礎をしっかりやりなさい」という言葉が嫌な人も、大勢いると思います。その気持ちは僕も、十分にわかります。退屈だし、丸暗記のように思えるし、「早く実戦を知りたい」と思う気持ちもある、そんな状態だと思います。自分ももし、受け身で音楽理論を学んでいただけだったら、特に面白いとも思わなかったかもしれないし、見えない固定観念に縛られていたかもしれません。

実際のところ、大学時代に音楽理論の基礎をしっかりやってきて良かったと思っています。例えば、セオリーになるⅠ→Ⅱ→Ⅴ→Ⅰの進行を四声体(ソプラノ・アルト・テノール・バスの、4つの声部に分かれた混声四部合唱を想定した演奏形態)で書いたときに、それぞれの声部がどのように進行しているか、絡み合っているかが分かると、最も理想的な和声進行がどのようなものか、体感で覚えることができるからです。

一度体感で覚えてしまうと、音域がどんなに拡大してもその感覚が応用できますし、何より無駄なく音の配置ができます。音楽が有機的に成長していく様子が、手に取るようにわかりやすくなるのです。

「自分で作曲する人じゃなければ、音楽理論なんてあんまりいらないんじゃないの?」と思う人もいるかもしれませんが、演奏者たるもの、そうではないはずです。もちろん趣味で楽しむだけでしたら必要ないかもしれませんが、プロの演奏家であれば、必須項目の一つだと考えます。

一例を挙げると、「この和音(基本形)からこの和音(基本形)に移るときに、どうも普通よりもベースラインが重くなってしまう」と感じることがあります。そこで、本来Ⅱ度7の和音(ハ長調で言えば、レ、ファ、ラ、ドの和音)の時に第一転回形を使うと和音がスムーズに流れる局面だと知っていれば、基本形の連続で書かれていることが、ベースが重くなってしまう一つの原因になっている可能性があると気付くことができます。気付いて仕舞えば、そのベースラインをなるべく重く弾かないように気をつけることができるばかりか、他の曲で同じような局面に出くわした時に、応用が効くのです。

ここが大事なのです。数学の世界でもそうですが、「基本がしっかり出来ていれば、応用は効くものだ」ということが音楽の世界にも言える一例だと思います。

そうして、一度基本がしっかり身についたら、「その基本から外れた時に、音楽はどうなるか?」ということが探求できるのです!!!このことが、音楽家にとってはとんでもなく大きい。芸術は人間の行為の可能性を探求し続ける分野でもあるので、いわゆる「標準」をわかっていることは、その後の芸術行為の発展にも物凄い力を発揮する材料になるのです(ピアソの、若かりし時の絵から晩年の絵への変遷を辿ると、かなり良くわかります。)

基礎を身につけないままだと、「可笑しい」ことや「特異なこと」、「強烈な表現」が充分「可笑し」く、「特異に」、「強烈に」感じられないことだって出て来ますし、とにかく勿体無い事だと思うのです。基礎を身につけるということは、「標準を知り、そこから発展できる準備をする」ことだと言い換えられるでしょう。

読者の皆さんの中に学生の方が居ましたら、学生のうちに、和声、対位法など、あらゆる音楽の基礎を、今のうちにしっかり身につけることを強くオススメします!

その後絶対に、自分の内側からアウトプットする際の引き出しが増え、様々な武器が揃っていることに気づくはずです。

ABOUTこの記事をかいた人

武蔵野音楽大学、同大学大学院ヴィルトゥオーゾコースを修了。 音楽でしか表現出来ない世界に魅せられ、独学で作曲を勉強する。 大家の作品の演奏のみならず、「この世にかつてない、新しい音楽を作る」「自分の感じる世界を余すことなく表出する」という理念の元に、創作や独自の響きの研究も行っている。大学の専攻はピアノだが、ヴァイオリンも演奏する。