「音楽」とは

「音楽」とは、一体なんなのでしょう。

ある人は、身の回りにあふれている流行歌を「音楽」として挙げるでしょう。またある人は、自分が打ちこんでいるバンドでの演奏を挙げるかもしれません。

「音楽」は目に見えないからこそ抽象的で、人によってその姿を変えます。

ですが、そこには1つの共通点があります。

「音楽は人間の生活から生まれる」という点です。

普段、テレビやラジオから聞こえてくる流行歌も、誰かの「生活」から生まれたものです。古くから続くクラシック音楽も、作曲家の「生活」から生み出されたものです。クラシック音楽だけではありません。お祭りでのお囃子などの民俗音楽も、同じです。(むしろ、民俗音楽の方が人間の生活から直に生み出された音楽と言えますね。)

全ての音楽には、創り手の生活から来る想いが込められています。

ベンジャミン・ブリテンという20世紀イギリスを代表する作曲家の作品を例に見てみましょう。

彼は同性愛者でした。同性愛を普通のことと考える人が現代より少ない当時は、ブリテンにとって生き苦しい時代だったことでしょう。しかし、彼には何人かの理解者がおり、その人達と共に創った作品をいくつも残しています。その中の1つである、『キャバレー・ソング』という作品は、彼と、彼の友人で共作者のW.H.オーデンのセクシャリティについての想いが色濃く出ています。

この作品は、4つの歌曲から成っていますが、その中の「愛の真実を教えて」という歌曲には、マジョリティ、つまり「異性愛者の愛」が「普通」とされてしまうことへの葛藤が詩に込められているのです。ブリテン達は、愛には様々な形がある、という考えを常日頃から考えていたのでしょう。

ちなみに、当時のイギリスでは様々な文化人が「キャバレー」に集まり、多くの思想や芸術を生み出していました。ブリテンも例外ではありませんでした。

さて、ブリテンの『キャバレー・ソング』を例に挙げてみましたが、この1つの作品を取り出すだけでも、時代背景や創り手の生活が如実に表れていることがわかりますね。

まさに、音楽とは「人間の生活」と言うことができるでしょう。

これから音楽を聴くときは、作品の裏にある創り手の「生活」にも思いを馳せてみてはいかがでしょう。いつも聴いていた音楽も、また別の響きに聴こえるかもしれませんよ。

ABOUTこの記事をかいた人

武蔵野音大卒の声楽家。様々な芸能技法を武田梵声氏に師事しており、音域は8オクターブ(E-1〜E7)に及び、コロラトゥーラなども得意とする。日本とイギリスのハーフで、スペインやベネズエラの血も入っている。人類史上最高の歌手を目指して日々ストイックなトレーニングを重ねている。