曲目解説 アルバム「ギルバート慶と世界創造」❾孤独の嗜み

概要

急に明るい曲調に変わるこの曲は、過去のしがらみを捨てて再び社会へ出るというテーマで作っています。それと同時に、もう一つのテーマの新世界創造をテーマにしています。ストーリーの1つは子供から大人への精神の成長で、2つめのストーリーは自分の思い通りに世界を作り替えるです。

序盤の「❸蘭鋳」では「生きてるって感覚がしんどい」と言っていたものが「ああ、生きてるみたい」と、初めて実感を受け入れます。

なぜ急に変わったか

急に曲調が変わりますが、これは人間の精神の構造に従っています。ここまでの曲は、生まれてきたことへの文句や絶望感、恨みや焦燥感など、社会に出て人と関わるごとに1つずつ経験していきます。それは決して受け入れやすいものではありませんが、幼児的な万能感で文句ばかり言っていた最初の頃から、どんどん経験をして現実を受け入れていきます。

そして最後の孤独の嗜みは、孤独を紛らわすための性依存を題材にしています。つまり、序盤で生きている実感を持つために性依存を起こしていた主人公ですが、さまざまなことを経験して「こんなことしてても意味ないな」と気付きます。自分がとってきた手段の無意味さを感じ、前向きに人生を切り開いていくことを決意します。

実際には性依存や、あらゆる恨みの感情などの経験は無意味ではありませんが、この主人公はこの状態を抜け出すことが自分にとって重要だと考えたわけです。

しかし主人公にとっての自己実現とは現代社会に溶け込むことではなく、社会を作り替える。自由自在にこの世を新しく作り替えることです。なぜならば、社会は良いものという前提がおかしく、おかしい側に合わせるのはむしろマイナスであるためです。崩壊していく世界を美しいと考え、愛する方向へと向かってゆきます。これが「孤独の嗜み」というタイトルの意味です。

曲の作り

この曲は、万能感に溢れるオケとなっております。世界を自分の通りに作り替えると言っても幼児のワガママな願望とは違い、主人公は実際に勉強や努力をし、愚かさに向き合い「険しい道」をあえて選んでいくという決意をします。そのため、ずっと高揚感のある雰囲気であると同時に、日立の海から外への航海をテーマにしています。そのため副題は「Voyager Sur Les Océans(海を巡る旅)」という言葉になっております。

もう一つのテーマ

隠れたもう一つのテーマは「疲労」です。ここまできた段階で、経験は積んで成長しても、肉体に疲労は蓄積しています。「光を見上げてたい」「灯をつけてく あゝ…」などの歌詞は、寝ながら上の蛍光灯を眺めていき、その夢から無理やり目覚めるということを示していますが、本当は世界創造のために頑張らず、すぐに幸福になりたいと思っています。

「自分は何故ここまでしないと幸せになれないのだろうか」という感覚から「救済が終わったらコタツで一緒に寝ちゃおうか」というセリフが出てきます。あたたかい、存在を受け入れてくれる家庭像に憧れていることだけは残存しているということです。

ですがそれは今は無理なので、次の曲でもう一度「自由自在」のコードに戻り、瞑想空間に入ります。胎内そして自分の生まれる何億年も前の記憶まで遡り、宇宙空間を浮遊しながら力と叡智を得ます。