曲目解説 アルバム『雇はれ蚕Ω』より「譱と惡」(ぜんとあく)

アルバムの構成の秘密

5曲目のこの曲までお聴きいただいた方は、また新しい気づきが起こるはずです。実はこのアルバムは、全体を通じた第4のストーリーが発生しており、繭→芋虫→蛹→羽化→蛾→神という流れで構成されており、最初はクラシック音楽の度合いが強く、曲が進んでいくに連れて作曲方法が自由に崩壊しています。

クラシック音楽の中でも古典的なコロラトゥーラの作りから、さだめから解放されて自由な曲作りへと解き放たれていく様を、曲そのものの作りで表現しています。そしてCD版限定曲「万物を愛するために」では、エレクトリック調となり、解放され自由自在に転生していくさまを表しています。

このように歌詞以外でもアルバムの構成自体で解放を表しております。そしてこの「譱と惡」からは脱出への葛藤が起こり、錯乱した作りが始まってきます。そして朝顔(過去の自分)との別れを意識し始めます。家から脱出するには、仲良しの朝顔にももう会えなくなってしまうのです。

サクリファイス的な歌詞と、コミカルなオケ

僕は音楽作りで、1つずつのパートだけでも音楽として成立する作りを目指しています。今回の作品では、ベースラインが踊りのように動き、通常の思考停止のオワってる音楽理論で言われる「ベースは低音をささえる」みたいな作曲法は使用しません。ベースはメロディと対をなす第二の旋律にすると良いです。サビ前のベースの動きで、歌詞の「昔の思い出、捨てて良いよね?」のワクワクしたアホみたいな気持ちを表しています。

基本的に、かっこよく作ろうとすると曲はダメになります。カッコいいが何なのかがわかっていないからです。この世を解き明かす理論体系を持っていないので、その細部である現象に関しても上手く理解することができないので、アメリカナイズされたものを中途半端にこなしてしまうことが大きな原因です。

「御前の宝を僕にくれ」などエネルギー交換の理論を入れたり、「あの日に忘れたこと」の「あの日」とは「阿の日」であり、雇はれ蚕のサビの「阿!」を発した瞬間から人生が転換したことを示している。

こだわりポイント

この曲はAメロからサビ並みのテンションを出しています。音楽が魅力的に聴こえるかどうかは、テンション(気)のコントロールが不可欠であり、これを抑えると張り上げたり盛り上げなくてもどこからでも自在にサビを形成することが可能になります。

また、この曲では武田梵声先生に教えていただいた、渋谷にある岡本太郎さんの「明日の神話」に描いてある核の火の中で踊るマレビトの思想に影響を受けて作っています。途中までは普通にコミカルな曲に聴こえますが、後半の夕暮れと踏切の音で、自分の育ってきた景色や落ちていく太陽を示し、そこから普通の中学生が持つような単純な、寂しさから朝顔と離れたくない気持ちが出現します。

そしてその後にオケにディストーション(歪み)がかかり、陽が落ちると同時にこの世界の崩壊を示しています。さて、人間を超越した神となった主人公は世界の崩壊のようなダメージ「愛の対象との分離」も乗り越えられるのでしょうか?この作品ではやはり主人公が引きこもりの中学生なので、基本的に未熟です。ですが、ちょっとだけ成長して終わる。そんな作品にしました。

(サムネイルは明日の神話のWikipediaよりお借りしています)